
「ブルースってどんな音楽?」
ブルースを演奏してる者にこの質問は尽きないでしょう。
日本人の多くはブルースという音楽や言葉は知っていても
その音楽を耳にした人は少ないのです。
僕もブルースを演奏してると言うと、決まって
「どんな音楽なの?」という答えに詰まる質問を受けてきました。
音楽を言葉で伝えるのはとても難しいです。
しかもブルースという日本では馴染みの薄い音楽を
「こんな音楽だよ」と説明する方も困難だし
説明を受けた方も理解できずに「ふ〜ん」で終ってしまいます。
今回は僕が19歳の頃から演奏しているBLUESという音楽を
解説、論じてみたいと思います。上記でも書いてるように
説明するのは難しい事ですが、挑戦してみようと思います。
【ブルースの歴史】
ブルースは歴史の長い音楽なので、まずは歴史・誕生の
エピソードから入ってみたいと思います。
社会の授業で黒人奴隷の話しを聞いた事がないですか?
ヨーロッパの白人が、アフリカに入って来て、黒人を狩り
労力として売買したという非人道的な差別市場ですね。
この奴隷市場で、アメリカに送られた黒人が自らの苦境を
歌で跳ね返し、自分を保とうとしたフィールドハラーが
ブルースという音楽の起源なんです。
アメリカに送られた黒人奴隷は、ヨーロッパの黒人奴隷と違い
広大な大地を開拓するのに、土地に縛られ
自由がなかったんですね。そういった不遇から
生まれた音楽、それがブルースです。
【何を歌っているのか?】
ブルースは個人的な日常が歌われています。
中でも失恋のブルースは多いでしょうね。
ブルースの巨匠の1人であるサン・ハウスは
「ブルースは男女間にしか生まれない」と語り
自身も愛する人を失うブルースをよく歌っていました。
他には金欠で困ってる歌や、脱獄した歌
悪魔がどうのこうの言ってる歌、卑猥な歌
南京虫が鬱陶しい歌とか…。
ダンスを踊るためのインストのブルースもあります。
こうした日常をストンプして憂さ追い出すんですね。
そしてまた日常へと戻っていくわけです。
【日本のブルース・ミュージック】
日本ではBLUESを「ブルース」と読んでいますが
実は「ブルーズ」という読みが正しいんですよ。
まぁブルースで定着してるので、僕も含め
ブルースと僕も読んでいる人の方が大多数ですが
中には「ブルーズ」と正しく読む人もいます。
70年代、日本でもブルースが大阪・京都といった
地域を中心に流行した時期があります。
今ではブルース演奏の教則本が販売されてますが
当時はそんな物はなく、レコードを聴き
音を拾い、フィーリングを掴んでいったわけですね。
しかし日本でのブルース・ブームは瞬く間に流行を終え
変わりに、ブルースと名の付く歌謡曲やポップスが売れ
名前だけが残ってしまったわけですね。
だから日本人はブルースという言葉だけは知ってるけど
実際にブルースを聴いた人は少ないのかもしれません。
よくブルース演奏してますって言うと「淡谷のり子?」
と、笑いながら茶化す人がいますもんね…。
こういうと日本でのブルース・シーンは消滅してるように
思えるかもしれませんが。東京のジロキチや京都のタクタク
山口のブギーハウスなど、ブルースの名所として長く頑張ってる
スポットは結構あるんですよ。新しい所では青森市が町興しの
一環で、ブルースのフェスを開催したりしてますし
今年は会場の確保が出来ずに中止になりましたが
ジャパン・ブルース・カーニバルも長く続いてるイベントですし
ジェイムス・コットンやバディ・ガイのような、ブルース黄金期から
活躍してるブルースマンが来日し、会場を満員にさせています。
聴いてる人は少ないけど、根強いファンはいる!
というのが日本のブルース事情でしょうね。
【音楽的形式】
日本のブルース界を代表する近藤房之助さんは
「ブルースはフリー・ジャズよりフリー」と言ってます。
どういう事かというと、音楽的な約束事が他の音楽より
少なく、割りと自由に演奏できるという意味なんです。
が…、ブルースも以外と小言の煩いおじさん達がいるんです。
セッションなんか行くと、若い人の演奏を聴いて
「ブルースじゃねぇよ」とボソっと言うおじさんが多いんですよね。
実は意外と約束事のある音楽でもあるのです。
まず、リズム。ブルースはベタなリズムで演奏されません。
シャッフルという跳ねたリズムで演奏されます。
テレビでアフリカ人が打楽器を叩きながら跳ねてるのを
見た事ないですか?ブルースも元はアメリカに連れてこられた
アフリカ出身の黒人奴隷のフィールドハラーです。
リズムのルーツはアフリカにあるので、跳ねるリズムが
音楽的形式のひとつになってるんです。
このシャッフルが出来ないと、ブルースは演奏できません。
使用されるスケール(音階)。僕はギタリストなので
ブルース・ギターで使われるスケールを説明しますね。
まずペンタトニックス・ケール。5つの音から構成されてる
スケールで、ペンタという言葉は5という意味があるんだそうです。
key=C(は長調)では、C(ド)・D(レ)・E(ミ)・G(ソ)・A(ラ)
といった構成音になります。次に紹介するスケールは
ブルース・スケールというスケールです。
ブルーノートなる言葉を聞いた事がないですか?
ブルーノート・スケールにメジャー・スケールの3音を加えたのが
メジャー・ブルース・スケールで、ブルーノート・スケールの
6音を半音下げたマイナー・ブルース・スケールです。
key=C C・D・E♭・E・F・G♭・G・A・B♭
key=Am A・B・C・D・E♭・E・F・G
もちろん、これ以外のスケールを効果的に使用するのもOKです。
僕はハーモニック・マイナー・スケールを少し入れたりします。
入れすぎると小言おじさんからチクリときたりします(^^;
でも入れすぎるとブルース特有のニュアンスが無くなるのも
事実なので、よく考えて実践していくのが良いでしょうね。
進行は12小節が1コーラスで、3つのコードで
進行していくのが基本になってます。
8小節の場合もありますし、コードが複雑な進行もあります。
あと、2小節目が「そのまま」なのか「上げる」のかといった
進行もあります。key=Cで例を示してしますね。
||:C7|F7|C7|C7|F7|F7|C7|C7|G7|F7|C7|G7:||
この進行は2小節目がF7なので上がってます。
「そのまま」と言われたらC7で弾きます。
下記は僕の好きな進行です。良かったら弾いてみてください。
||:A7|D9|A|A7|D9|D9|A/Bm7|C#m7/F#9|Bm7|E9|A/D9|Bm7/E9:||
【テクニック】
ブルースは現代音楽のルーツなので、現代音楽で使われる
テクニックは全て使用されています。中もでも重要視される
テクニックはチョーキング、ブルースの世界では
ベンドとも呼ばれます。ビブラート。チョーキング&ビブラート
ブルースの世界ではスクウィーズと呼ばれるテクニックで
B.B.KINGが開発しました。
チョーキング(ベンド)とは弦を曲げて音上げるテクニックです。
1音上げ・半音上げなど、曲げる具合によって
ピッチ(音程)が変わります。正確にピッチをコントロールしないと
ピッチがスケールからずれるので普通、音楽を演奏する場合
正確性を求められますが、ブルースの世界では
あまりそこを衝く人はいないかと思われます。チューニング(調律)が
ずれていても、あまり文句の出ない音楽でもありますので。
またブルースではクウォーター・チョーキングというテクニックも
多く登場し、譜面上では「Q.C」と表記されています。
ハーフのハーフなんで音的には4分の1音上げる理屈になりますが
ニュアンスを重視して上げすぎないのがコツでしょうね。
キッチリ4分の1音上げた音を出す必要はないです。
ビブラート。音を揺らせるテクニックですね。
弦に対して縦にかけるか、横にかけるか人によったり
ジャンルによったりして違いますが、ブルースではどっちでもOKです。
揺れを均等にするのが基本です。なかなか難しいテクニックです。
曲のテンポも視やに入れて揺らす事を忘れずに。
横がけだとピッチも変化しやすいので注意ですね。
ブルースでは、音を伸ばす時にビブラート表記される事が多いです。
チョーキング&ビブラート(スクウィーズ)は
チョーキングした後にビブラートをかけるテクニックです。
ボトルネックでの奏法が出来なかったB.B.KINGが
ブッカ・ホワイトの演奏を見て開発したテクニックです。
こちらもピッチ、揺れの均等、曲のテンポなどを
視やに入れて演奏するのがコツです。
ビブラートもチョーキング&ビブラートもそうですが
基本、ピッチがずれようが、揺れがヘタだろうが
テンポにあってなかろうが、ブルースの場合
ご愛嬌とされる場合が多いです。でも出来ないのと
たまたまミスったは区別されるので
当人の為も含め、練習ではちゃんと練習した方がいいですね。
かといって上手さや正確性を求める音楽でもないんですけどね。
【ブルースも色々】
ブルースと一口に言っても、色々なブルースがあります。
地域によって特色があるのもブルースの特徴です。
●クラシック・ブルース
市場に向けて発信されたブルースで
ブルースというより、ラグタイムに近い感じです。
女性シンガーが圧倒的に人気がありました。
代表的なシンガーは、ベッシー・スミス、マ・レイニーなど。
●デルタ・ブルース
アコースティック・ギターやリゾネーター・ギターを
用いて弾き語りをするミシッシッピのブルースです。
チューニングも変則的で、ボトルネックを指にはめて演奏します。
代表的なブルースマンは、チャーリー・パットン
サン・ハウス、ローバート・ジョンソンなど。
●テキサス・ブルース
アコースティック・ギターでの弾き語りや
バンドでの演奏も行われるブルースで、力強く
ファンキーで、真っ黒なブルースです。
代表的なブルースマンは、ブラインド・レモン
ライトニン・ホプキンス、マンス・リプスカムなど。
●ニューオリンズ・ブルース
軽快なリズムが特徴のブルースです。
ブルース特有の泥臭さはないです。
独自の音楽文化を発展させた地域だけに
様々な音楽的要素のあるブルースですね。
代表的なブルースマンは、スヌーク・イーグリーン
アール・キング、ファッツ・ドミノなど。
●シティ・ブルース
田舎のカントリー・ソングが一転して都会的なセンスに
仕上がったのがシティ・ブルースです。
ビッグ・ビル・ブルーンジー、リロイ・カーなどが
代表的なブルースマンですね。
●シカゴ・ブルース
このシカゴ・ブルースが、エレクトリック・バンドの元祖です。
弾き語りが主体だったブルースが電気化され、パワーアップしました。
このシカゴ・ブルースはブルースの黄金期を支えた
ブルースマンやブルースウーマンがたくさんいました。
南部から移住した黒人達の一大マーケットになったシカゴ。
今でも大規模なブルース・フェスが開催されています。
代表的なブルースマンは、マディー・ウォーターズ
ハウリン・ウルフ、ジミー・ロジャースなど。
●モダン・ブルース
シカゴ・ブルースから発展したオシャレなブルースです。
ジャズ・ファンなんかにもお勧めしたいブルースですね。
代表的なブルースマンは、Tボーン・ウォーカー
B.B.キング、フレディ・キング、アルバート・キングなど。
●ファンク・ブルース
「これはブルースなのか?」
当時の日本のブルース・ファンの間で議論になった
アルバム「100%コットン」はブルース・ファンには
有名な1枚ですね。16ビートでリズムをプッシュ!
ニューオリンズ・ブルースと並んで異質なブルースです。
代表的なブルースマンは、ジェイムス・コットン
ジョニー・G・ワトソンなど。
●その他
アメリカ白人によるホワイト・ブルース
イギリス人によるブリティッシュ・ブルース
日本は・・・J-ブルースかな?
お隣の韓国でもブルースマンがいて
来日したり、オーストラリアのブルースマンも
来日して演奏したりしてますね。
スー・フォーリーはカナダのブルースウーマンだったかな?
クリーム辺りのブルース・ロックも根強いファンがいますよね。
【あとがき】
ここまで読んでくれて、ありがとうございます。
少しでもブルースという音楽が伝わったでしょうか?
やはり音楽なので、文章よりも聴いてみるのが一番でしょうね。
ブルースという音楽はとっつき難い音楽と言われていますが
ハマれば抜け出せない悪魔の音楽とも言われています。
それはブルースとは音楽である前に
誰もが持ってる心の憂さだからだと思います。
人間が持ってる感情のひとつ。それがブルースです。
昔、NHKの番組にBBが出演した時、インタビュアーの
オヤヂが本当馬鹿で、「日本人にブルースはできない・・・」
とか何とか言い出して、BBが「そんな事はない」と
ブルースと人種の関係性をキッパリ否定し
ブルースと人間との関係性を語っていました。
やっぱブルースの王様は違うな〜と思うと同時に
インタビュアーのオヤヂがとても小さく、情けなく見えました。
そしてこんな台詞を吐く人の音楽は聴く価値もないと。
ブルース触れるという事は、その人の感情のひとつに
触れるという事だと思います。今日、僕の文を読んで
ちょっとでもブルースを聴いてみようかな?
演奏してみようかな?と1人でも思ってもらえれば
こんなに幸いな事はないと思います。
【ようへい推薦・ブルース・アルバム】
ERIC CLAPTON/from the cradle(初心者にお勧め)
FENTON ROBINSON/SOMEBODY LOAN ME A AIME
EARL GILLIAM/Texas Doghouse Blues
TEXAS HARMONICA RUMBLE(オムニバス)
LIGHTNIN' HOPKINS/LIGHNIN' and the Blues
T-BONE WALKER/T-BONE WALKER
B.B.KING/80
FREDDIE KING/SAME OLD BLUES
BUDDY GUY/This is BUDDY GUY!
JAMES COTTON/35TH ANNIVERSARY JAM
ALBERT COLLINS/DELUXE EDITION
LUTHER ALLISON/LIVE IN CHICAGO
CARLOS JOHNSON/LIVE at B.L.U.E.S. on HALSTED
DEBBIE DAVIES/All I Found
JOHN HAMMOND/AT THE CROSSROADS
EARL KING/COME ON
長見順/OYAZI
近藤房之助/TAKE ME BACK TO THE BLUES
なんだの言ってるような奴の演奏なんか
聞きたくもないのは同感です。
自虐な国民性丸出しですよね。
インタヴュアーとしても失格ですよ。
じゃ、日本人は演歌とか民謡しかできないのか?
ってことですよね。もう音楽事態辞めて頂きたいと僕なら思いますね。
音楽という表現をするのに
「日本人だから」と
消極的になる方がオカシイんです。
表現の力量は個人の差であって
人種の違いではないと思います。
故ルース・ブラウンも
音楽に「人種は関係ない」と言ってます。
むしろ音楽に「人種」を持ち出す方が
オカシイんですよ。くにさんの言うように
そういう人は音楽自体をやる
資格はないのかもしれないですね。
ロックだってブルースを基盤にした
アメリカ発信の音楽だってのに…。
